相続?なにそれ、おいしいの? 29.過去のおさらいと民法892条

|ω・) ソーッ・・・ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。



「相続?なにそれ、おいしいの?」シリーズ29回目/52となります。
 


「相続ってそもそも何?」って聞かれたとき、スムーズに答えられる人はどのくらいいるのでしょうか? 「死者の財産を引き継ぐ行為?」正解です。バカにするな!という次元の質問ではありますが、実はそこから先、もうちょっと踏み込んでいける余地があるんですね。かなりアカデミック寄りな話になりますが、なるべくシンプルに解説したいと思います。宜しくお付き合いください。




 まず世界の相続ですが、先進国に絞って言えば、以下の三つの基軸に分けられるのかな? という説が有力です。以下、ちょっと文体が堅くなりますよ。



① 英米系(コモンロー地域)
 故人の遺言内容は全くの自由であって、例えば下の佐兵衛の遺言みたいなハチャメチャな内容も原則OKとされる。参考↓
相続?なにそれ、おいしいの? 9.佐兵衛の驚愕遺言・・・その弐(負担付遺贈と解除条件・停止条件) - はてなから引越し作業中~行政書士sukekiyo-kunの家族法など(仮)


 しかし、これでは遺族に対してあまりにも気の毒な遺言が横行してしまうため、1938年英国では「家族給付法」が運用開始され、生活水準などを参考にある程度の額を受ける権利が認められるようになった。
 しかし、社会保障受給額の程度によっては、給付額が減額されることもある。つまり、家族給付+社会保障の組み合わせの相互補完遺族の生活保障をしていくというやり方。


② ローマ系(ドイツ民法)
 どちらかというと個人主義寄り。故人の財産は本人固有のものであって、家のものではないと考える。この場合の相続は、故人の財産を遺族の生活保障のために分配するもので、例えば、なんのゆかりもないお気に入りの妾に財産を譲るなどと言う内容の遺言は、家族間倫理を著しく踏みにじるものとして非難の対象となり、「不倫遺言※注⑴」と呼ばれ、無効とされることもあった。
注⑴ 原田慶吉著『日本民法典の史的素描』(創文社1954(昭和29)年より)


③ ゲルマン系(フランス民法)および日本
 ローマに比べると家族団体主義。先祖伝来の家産(経営財産。農民であれば農地)を代々引き継ぐことに力点が置かれ、家長(家督)のもとにそれを集約させようという、家督相続に近い考え方。子の数によって、あらかじめ「自由分」が設定されており、遺言者はその狭い自由分の範囲でしか財産処分の裁量が認められなかった。
 ちなみに日本は「自由分」という概念は採用しなかったため、遺言の自由度は英米系ほどではないものの比較的高い。明治のお雇い外国人、フランスの法学者ボアソナードが起案した「ボアソナード民法」をベースに明治民法を構成したために、ややゲルマン・フランス民法寄りの内容になっている。
 それが戦後改正によって家督相続の思想が薄くなり、ドイツ法の要素(例えば遺留分を主張しても、もらえるのは権利額相当の金銭に限る。経営財産に対する権利も金銭に換算して決着をつける手法)も取り入れたりして現在に至る。


 ③のゲルマン系の概念というのは、つまり相続というものは、先祖伝来の財産を過去から現在、そして未来へと繋ぐ世代間の協同作業であるということ。つまり、協同作業であるからには当事者間の信頼関係は不可欠。しかし、世の中にはその信頼関係を簡単にブチ壊す輩も多くいる。復習がてらに過去記事と犬神家の関係図を参照されたい。


相続?なにそれ、おいしいの? 20.犬神三姉妹と青沼菊乃・静馬の関係 - はてなから引越し作業中~行政書士sukekiyo-kunの家族法など(仮)



 最後に、民法892条の条文をあげておきます。今後の解説展開にあたって重要なキモになる条文です。十分に読み込んで頂けると幸いです。
民法第892条:遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人になるべき者をいう。以下同じ)が、被相続人に虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。





ほなまた! 失礼!
|彡. サッ!!