すっきりわかる家族法道場・・・1.「法は家庭に入らず」と儒学の影響

|ω・) ソーッ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。


 現在主力となっている犬神家と、別のシリーズということで始めさせていただきます。




 当シリーズは小難しい家族法を活字が苦手。あるいは活字を追っていると、すぐに眠たくなってしまう方向きに掲載するものです。
 数ある法律の中でも、家族法すなわち親族・相続法というものは、いわゆる「道徳」と「法」がブレンドされた独特の香りがあるというのが、私の感じ方です。しかし「法は家庭に入らず」という諺もあります。その考え方の最たるものが、


刑法244条1項:配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪(窃盗)、第235条の二の罪(不動産侵奪・・・不動産を奪ってしまうこと)又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。


 というものです。罪状そのものは問われるけれども、それによる刑罰は免れるということです。子供がこっそりと、親の財布から万札を一枚抜き出すというのも、厳密に言えば窃盗ですが、それくらいのことなら、ゲンコツで一発「ゴツン」で済んでしまうことにしようよ・・・(注意:昭和の話です。今のパパママは真似しないようにw) というのに似ています。不動産乗っ取りはさすがに酷いなぁ・・・とは思いますが、これも家族の自律的な解決を最大限尊重しようという考えですね。
 しかし、そうは言っても、あえて法律チックに解釈すれば、「家族=社会集団の最小単位」となります。であるならば、最小単位のための法律が必要、ということで作られたのが民法の一ジャンルである親族・相続法です。ひとまとめにして「家族法」と呼ぶ場合もあります。私はどちらかと言えば「親族・相続法」と並べて呼びたい派です。しかし「家族法」の方が短く呼びやすいので、当ブログでは「家族法」の呼称を採用します。


 明治の文明開化に合わせて、いろんな法律が整備されていった中に民法はあります。これが旧民法(明治民法)です。当然、親族・相続法に相当するものも考案されましたが、その内容とは恐るべきことに・・・



①旧(明治)民法:970条 被相続人ノ家族タル直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ家督相続人ト為ル
一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者ヲ先ニス
二 親等ノ同シキ者ノ問ニ在リテハ男ヲ先ニス
三 親等ノ同シキ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニス
四 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ女ト雖モ嫡出子及ヒ庶子ヲ先ニス(昭和17年改正)
五 前四号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス



②婚姻年齢は、男は17歳で女が15歳(旧民法765条) 
義務教育修了相当の年齢になった女子は、さっさと嫁入りせよと言わんばかりです。



③女子は婚姻すると行為無能力者となる。たとえ婚姻前に成年で行為能力者であったとしても、妻になると行為無能力者となってしまう。重要な法律行為をするには、常に夫の同意を得る必要がある(旧民法14条~18条)


 こんなものでした、男>女、年長>年少、といった具合に「儒学」の影響が随分と強かったようです。女性読者が青筋立てながら読んでいる姿が目に浮かびます・・・。婚姻によって、夫の同意を得なければ法律行為が出来ない行為無能力者に転落・・・。現代ではありえない話です。
 もし万が一、令和の世にこんな条項が生き残っていたら、それこそ「結婚したくない女子」が増えて、少子高齢化はもっと深刻になっていたでしょう。
 しかしその反面、副作用として婚姻の形を取らない婚姻。いわゆる内縁婚が増えて・・・そうですね、今のフランスのような内縁婚保護、ひいては婚外子の保護が進んだ社会になっていたかも知れません。一種のパラドックスのようなものですね。


 もっとも、明治民法のような、理不尽な性差別が残る条項が、敗戦を機に廃止されるべきだったのは当然のことです。



ということで、まだ始まったばかりの新シリーズ。これからどう進めていくかは模索状態ですが、ボチボチと更新しつつ考えていきたいと思います。



ほなまた!失礼!
|彡. サッ!!