相続?なにそれ、おいしいの? 4.犬神家の遺産の分割禁止


|ω・) ソーッ 皆さんご機嫌よろしゅうに。



「相続?なにそれ、おいしいの?」の④となります。
       



 ↑前回もあげました『犬神家の一族』登場人物の関係図です。今日はこのほかに、犬神家の顧問弁護士・古舘氏も登場します。
 では、犬神佐兵衛の遺言について、違和感を感じた最初の部分について、お話したいと思います。小説の世界とはいえ、こんなに長い間、遺産を放置するような遺言は、いかがなものかと・・・?
 
横溝正史『犬神家の一族』KADOKAWAより
「そしてその遺言状はいつ発表されるのですか。社長がおなくなりになったらすぐ・・・」そう尋ねたのは三女梅子の亭主幸吉である。
「いや、そういうわけにはまいりません。御老人の意思によってこの遺言状は、佐清(すけきよ)さんが復員されたときはじめて開封、発表されることになっております」
・・・「ほんとに竹子さんのおっしゃるとおりですわね。生きていらっしゃるといっても、遠いビルマのことですもの。お国へかえってくるまでには、まだまだ、どのようなことがあるかもしれませんわ」と三女の梅子である。
・・・「いや、なに、そんな場合には」と、古舘弁護士はかるく咳払いをして、「御老人の一周忌を期して発表することになっております。そして、それまでのあいだ、犬神家の事業、ならびに財産の管理は、いっさい犬神奉公会で代行することになっております」「犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5」 横溝 正史[角川文庫] - KADOKAWA



そんな悠長な遺言アリなん!? (; ・`д・´)


 はい。民法908条1項にこんなことが書いてありました・・・。ちなみに、相続自体は佐兵衛の死を以ってすぐに開始されるとされています。
民法882条:相続は、死亡によって開始する。
民法908条1項:被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。



 なるほどね。こういうことでしたか。確かに、犬神佐兵衛は遺言で分割禁止の意思表示をしていますね。一周忌までは自ら立ち上げた財団・犬神奉公会に財産の管理を任せるということは、実質的に一年間の分割禁止ということになります。



 さて、佐清がビルマ(ミャンマー)から帰還するまで待たなければいけない程の遺言。つまり、佐清の同席でなければ公開を許されない遺言。それは佐清にとってとてつもなく有利な遺言なのか、それとも極めて不利な遺言なのか? 我が身にとって凶と出るか吉と出るか? それはまだわかりません。



 しかし、この段階で犬神家の面々が、恐ろしいほどの焦燥感を覚えたのは間違いないでしょう。民法では最大限5年までは、分割禁止が認められるのはわかりました。それに比べれば1年なんて、まだマシかも知れません。しかし、この1年。さぞや犬神家の面々にとっては、悶々の日々となったことでしょう。



|彡. サッ!! ほなまた!失礼