相続?なにそれ、おいしいの? 6.佐兵衛の驚愕遺言の前に・・・婚外子と遺言書開封と失踪宣告

|ω・) ソーッ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。




「相続?なにそれ、おいしいの?」シリーズの6回目となります。今回は長いです。とにかく長いです。


 さて・・・いよいよ例の遺言状が犬神家の屋敷で公開されることになります。役者は揃いました。しかし、佐清(すけきよ)は頭巾をかぶったまま。これは偽物ではと疑惑が持ち上がりますが・・・



横溝正史『犬神家の一族』KADOKAWAより
一瞬、一座はシーンと静まりかえっていたが、だしぬけに松子が金切り声をあげた。
「佐清、頭巾をとっておやり」・・・
「佐清は顔にひどいけがをしたのです。それでああいう仮面をつくってかぶらせてあるのです。わたしたちの東京滞在が長びいたのはそのためです。わたしは昔の佐清の顔とそっくりな仮面を東京で作らせたのです。佐清、その仮面を半分めくってみせておやり」
 佐清の震える指があごへかかった。するとどうだろう。まるで顔の皮をひんむくように、ペロリとあごから仮面がまくれあがっていくではないか。「犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5」 横溝 正史[角川文庫] - KADOKAWA




 かくして、力技で偽物疑惑を蹴り飛ばした松子にうながされ、古舘が遺言書を読み始めようとしますが・・・
「ちょっと待った!!」



 ここで待った!です。序盤最大の見せ場です。画像とってきて貼りたいぐらいです。(著作権の問題でやりませんが・・・)  
 古舘さん、その遺言書、ちゃんと家庭裁判所に持って行って検認受けましたか? 





公正証書遺言以外は発見され次第、それから、遺言書を預かっていた人は、相続開始を知った時から遅滞なく、家庭裁判所に提出して検認の請求をしないといけません(法務局に保管されたものを除く。民法1004条1項)
 
 
 例えばお葬式が済んでから「あ。遺言書みーっけ! どれどれ?」ベリッ! はダメです。遺言書が無効になったり相続権を失ったりと、ことさらに脅すような情報をどこかで見かけた記憶があります。でもこれは脅しすぎ。ただし、そこまでひどいわけではないけれど、5万円以下の「過料」(民法1005条)くらいは課せられる可能性があります。ダメな行為とされていますから注意しましょう。
 万が一やってしまった場合は「すみませーん。法律知らずに開封しちゃったんですけど・・・」と頭を下げて家庭裁判所に持っていけば、そんなに目くじら立てて怒られるということはないんじゃないかな・・・? なんといっても古舘さんは弁護士ですから、その辺の手続きに抜かりはないでしょう。そう思いましょう。




 とりあえず続きは次回ということにして、お題の方に入りましょう。犬神家の松竹梅三姉妹ですが、みんな母親がばらばらです。佐兵衛は一生涯正妻(法律上の妻)を持ちませんでした。三姉妹の母三人は、昔風に言うと妾、今なら愛人、よくても内縁の配偶者止まりです。まず、内縁の配偶者の場合は相続権がありませんので、法定相続で行きますと、その子である三姉妹もそのままでは相続権が発生しないことになります。
 すみません。以前の記事で、三姉妹を養子と表現しましたが、厳密に言うとそうではない可能性があります。佐兵衛が三姉妹とちゃんと養子縁組していれば、なんの問題もありません。養子縁組によって実子(嫡出子)と同様の地位を手に入れられるからです。ちなみに養子には普通養子と特別養子の二通りがあるのですが、それについては、また後日触れることにしましょう。
 
 仮に養子縁組しないのなら、別の手もあります。認知(民法779条)という方法です。佐兵衛が自分の子と認めればいいのです。ただし、養子縁組と違って嫡出子の地位は三姉妹の手には入りません。婚外子(非嫡出子)として扱われます。ただし、認知された時点で、直系卑属(卑属とは佐兵衛からみた後の世代を指します)に含まれることになりますので、養子同様に相続権を獲得することになります。犬神家の諸般の事情を考えると、認知された婚外子と見た方がいいかも知れません。
 つい最近の平成25(2013)年までは、法定相続における非嫡出子の取り分は、嫡出子の1/2しかないと言う差別的条項がありましたが、今は大丈夫。対等です。


 そして、この後出てくる、青沼菊乃なる人物。これも佐兵衛の愛人4人目です。物語の流れから見ると、佐兵衛は菊乃を深く愛し、正妻に迎えようと思っていたフシがあります。それがダメなら菊乃の子・静馬と養子縁組。それすら無理なら認知。こんな感じの優先順位かと思います。
 で、実際の所どうなのか。認知ぐらいはしたのか。遺言書が読み上げられた直後まで小説を読み進めましたが、これまでのところ詳細は明らかにされていません。ただ、遺言状の文脈を見る限り、どうやら認知すらされていないのかな? そんな気はします。ただし、遺言で認知(民法781条2項)することも可能ですが、それらしい文言も見当たりません。
(認知が済んでいないのなら「遺言でも可能ですよ」って古舘さん、それくらいはアドバイスしてあげても良かったのでは・・・)


 静馬の横に「※ビルマに出征」と書いてますが、これは今のところは忘れてくださいw タネ明かしはかなり後の方になります。あくまでも今のところは、菊乃とともに消息不明・生死不明です。それも、かなり長い期間にわたって不明のようですね。静馬が戦争に出てビルマにいたことすら不明です。



 最後の音信から7年間の期間を満了した場合、申し立てによって家庭裁判所から失踪宣告が出され、7年間の期間満了の時点で死亡したとものと扱われる可能性があります。しかし・・・


 次回あたりで触れますが、佐兵衛は遺言で、犬神奉公会に静馬の捜索を命じています。静馬を諦めたくないという心情がうかがえます。なので、おそらく家庭裁判所への失踪申し立てはしていないと思われます。
 ちなみに、失踪申し立ての資格を持つ者についてですが、親族に限らず、利害関係を有する者で良いとされています。(民法30条) 松子たち三姉妹も、もしも静馬が生きていて、養子縁組でもされた日には、相続分が大きく変動するため利害関係を有することになります。よって失踪の申し立てをすることが可能です。もっとも、佐兵衛がそんなことを許すわけありませんが・・・。



ほなまた!失礼!
|彡. サッ!!