相続?なにそれ、おいしいの? 24.犬神家の特別受益
|ω・) ソーッ・・・ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。
今宵は「相続?なにそれ、おいしいの?」シリーズ第24回です。
よくここまでネタが切れなかったものだ・・・・・・。
今日は特別に、大富豪・佐兵衛さんには”小金持ち”までレベルダウンしていただきます。数百億とか言われてもピンとこない話なので。さらに、菊乃・静馬の青沼親子は、第6回での失踪宣告が成立したという条件設定を使います。
民法30条:不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。この失踪宣告によって、青沼親子は死亡したものと見做されることになります。
参考↓ 第6回の記事
佐兵衛死亡時の遺産は総額6億円と仮定。小金持ち言うても6億です。例の不吉かつ禍々しい遺言書は存在せず、三姉妹と佐兵衛の関係も険悪でなく、普通の状態で法定相続となった。さらに、繰り返しになりますが、松子・竹子・梅子それぞれの夫は、結婚時に犬神姓に改めただけのいわゆる「婿どの」に過ぎず、佐兵衛との養子縁組はされていません。
この条件での法定相続人ですが、松子・竹子・梅子の三人ということになります。三人とも妾に産ませて認知した婚外子(非嫡出子)ですが、相続権については、現行法では何の問題もありません。もっとも、平成25年(2013年)までは非嫡出子の法定相続分は嫡出子の1/2という差別的条項がありましたが、現在は撤廃されています。
したがって、松子・竹子・梅子の相続分はそれぞれ2億円ということになります。これはすでにご存じの方も多いと思います。ただ、問題となるのは、例えば松子がなんらかの特別な立場であった場合です。
条件追加:生前、佐兵衛は犬神本家を離れて神戸・東京に住んでいた竹子・梅子ではなく、最愛の孫・佐清の母である松子を贔屓し、後継ぎとして指名し、特別に別途1.5億円の生計費を援助していた。
この場合ですが、松子が受け取った金は「特別受益」と呼ばれるものになります。簡単な話、1.5億円の遺産前渡しを、シレっと松子がゲットしていたものと考えてください。この場合ですが、佐兵衛の遺産総額は6+1.5=7.5億円として計算されます(民法903条)。相続法ではこれを「持戻し」と呼びます。
ということは、7.5億円を3人で分け合うことになりますから、7.5÷3=2.5億円ずつの相続となります。よって松子の場合に限っては、佐兵衛の死亡後に受けとれる遺産額は、2.5-1.5=1億円ということになります。
さらに、1.5億円の贈与当時からインフレが進み、松子の受け取り分が1.8億円相当と評価された場合は、遺産総額は6+1.8=7.8億円。つまり三分割で2.6億円ずつとなり、佐兵衛死亡後に松子が貰えるのは2.6-1.8=0.8億円と、さらに少なくなってしまいます。つまり・・・・・・
「先渡しで貰ってんだから、帳尻合ってるじゃない!」
ということです。佐兵衛にしてみれば、松子に後継ぎを任せるという特別な意図があったのに、なんという皮肉。非常に残念な結果となります。こうならないためにも、遺言で「持戻しの免除(903条3項)」の意思を示しておくのは大事です。
それではまた。次回は今回とは逆のケース。「特別寄与」について触れてみたいと思います。
ほなまた! 失礼!
|彡. サッ!!