相続?なにそれ、おいしいの? 23.犬神佐兵衛の養子縁組? その弐(特別養子)


|ω・) ソーッ・・・ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。




 「相続? なにそれ、おいしいの?」シリーズ23/52となります。
前回の養子縁組の続きとなります。本日は特別養子について解説したいと思います。
  
↓前回記事




 佐兵衛が珠世を普通養子にとることは可能か、その条件などについて、前回は解説しました。さらに、養子には特別養子という種類があるのですが、その代表例が里子に出された子を養子に迎えるというものです。
 例えば、親の虐待から引き離す必要があるとか、実親のもとでは、満足な養育を受けられない気の毒な境遇にある子を保護する目的で里親を募り、里子として養育してもらうというのが、里親制度です。


 ただでさえ不幸な身の上の子どもを、自身の養子に迎えることになりますから、その条件は普通養子と違ってかなり厳格になります。普通養子であれば、基本的に両者の合意があれば縁組が成立(15歳未満であれば親権者等の同意つまり代諾、未成年なら家裁の許可など若干の縛りはあります・・・前回の項を参照)しますが、特別養子はそうはいきません。
 まず、特別養子にすることが出来る子は、満15歳未満とされています。15歳に達していれば、意思能力が具備されているとみなされるため、その子が養子になってもいいと意思表示さえすれば、普通養子で済む話だからです。ところが、特別養子ともなるとさらに、その子の父母(親権者)の同意が必要で、さらに家庭裁判所の許可という生やさしいものではなく、さらに厳しい「審判」を受けて認められなければならず、さらにお試し養育期間半年の経過を見て、二度目の「審判」と、やはりかなりハードルは高め・・・。これにはもう一つの重大な理由があるからです。


 その重大な理由とは、特別養子になってしまうと、その子は完全な養方の子になり、実方との縁はバッサリ切られてしまうということです。文字通りの縁切りです。ちなみに、普通養子の場合は、実親との親族関係はキープされます。・・・・・・ということは?
 察しの良い方はもうお気づきでしょう? 普通養子の場合は実親が亡くなった時、それから養親が亡くなった時の両方で遺産相続の恩恵にあずかれるということです。養子としてはまさにウハウハです。


 さらに言えば、戸籍上の扱いはどうなるか? 普通養子の場合には「養子・養女」と記載されます。ところが特別養子の場合は、実方との相続の問題も発生しないこともあってか、「長男・長女」など一見では養子と判らないような記載で、配慮されている様子が伺われます。そして、特別養子の養親になるためには、経済的な基盤はしっかりしているか、人格的にも高潔で、安心してその子を任せられる人物であるかどうか、家裁の「審判」で存分に吟味されることになります。
 「佐兵衛にとってクセモノ」と前回述べたのはまさにこれ。三人の妾をとっかえひっかえして、松子・竹子・梅子の三姉妹を産ませ、ろくに愛情を注がなかった佐兵衛は、お世辞にも人格高潔とは言い難くここのポイントで引っかかってしまう可能性が非常に高いといえます。


さらにこんな条文があります。
民法817条の三⓵:(特別養子の)養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。


 つまり、一生涯妻を持たなかった佐兵衛は確実にアウトです。そして、仮に夫婦が揃ってうたとしてもさらに条件があります。養親となる者は25歳以上であること(817条の四)。ただし、夫婦どちらかが25歳で片方が20歳以上ならOKです。やっぱり、しっかりした者にしか任せられないという思想が見て取れますね。



 しかし・・・、独り者でも人格高潔な人はいっぱいいます。より良好な養育環境を提供するには、両親が揃っていた方が望ましいという古典的な配慮からなのでしょうが、これからの時代いかがなものかと・・・。
 貧困などにあえいだ挙句、劣悪な環境に置かれた子を救うという意味では、我が国は、もはや独身者をも動員して手伝ってもらわなければ間に合わない・・・。そういう時代に突入しつつあると思うのです。つまり、子育て上のセーフティーネットですね。ここがしっかりしてないと、少子化対策もへったくれもないと思うのですが・・・。



ほなまた。失礼!
|彡. サッ!!