相続?なにそれ、おいしいの?・・・40.遺言破棄が許された? 犬神家の相続欠格その弐「お上とて鬼ではない」

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 犬神家の人々は登場しませんが、前回の相続欠格の続きとなります。


 少し長いですが、参考として民法891条の条文を再び・・・


民法891条:次に掲げるものは、相続人となることができない。


一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者。


二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りではない。


三 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者。


四 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、取り消させ、又は変更させた者。


五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者。


 このうちの五についてですが、相続欠格と認めなかった判例があるので紹介したいと思います。


(判例:二重の故意)


 被相続人Aは、その所有する不動産の売却代金を、息子Yの経営する会社に寄付し、Yはその会社の債務返済にあてること。また、この事につき他の兄弟の異議は許さず。との旨の遺言をして死亡。遺言書はYが預かっていた。またYは遺言の内容も把握していた。


 しかし、Yはこの遺言書を破棄。のちに「すべてをYが相続し、他の共同相続人には相応の額をYからそれぞれ支払う」という遺産分割協議が成立したが、共同相続人のひとりXが反発。Yは相続欠格にあたるから、この分割協議は無効であると提訴した。


 これに対し裁判所は、遺言書を隠匿・破棄した場合に該当するも、不当に自己に利益をもたらす目的はなかったとして、Xの上告を棄却した。


(最高裁平成9年1月28日判決)


参考:相続欠格事由5号に関する判例①判決の概要 | RE_gardens (re-gardens.com)


 たしかにYは預かった遺言書を破棄しており、これは891条の五に抵触する行為になります。ただし、相続欠格まで行かせるにはもう一つの故意つまり、不当に自己に利益誘導する目的が必要であるという判断です。これを「二重の故意」と呼びます。
 遺言書をそのままにしていれば、Yはストレートに売却代金全額を受け取れてウハウハなはずなのに・・・逆の行為をしていますね? 遺言書がなくなったから、皆で分け分けしようよということになり、Yの取り分は逆に減ってしまいます。


 結局他の相続人は、Yの自己犠牲に助けられることになったわけです。しかし、世の中どこにでも欲深い人間が居るものです。XはYを欠格として相続から排除し、さらに自己の取り分を増やそうと画策したわけですが「そうはいかんざき!」と裁判所がノーを突き付けたということです。難しい用語で「相続欠格の宥恕」判決です。宥恕(ゆうじょ)とは簡単に「許す」という意味です。
 もっとも、Yの行為は違法です。被害者からの告訴があれば、刑事罰を受ける可能性(親告罪)があります。


刑法259条:権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、5年以下の懲役に処する。(私用文書毀棄罪)


 Yがその後、私用文書毀棄罪を問われたかどうかは不明ですが、相続欠格については、「自己犠牲の精神の発露」からきた遺言破棄として、ある種の温情ある判決となったようです。お上とて鬼ではないぞ・・・でしょうかね?



それではまた。



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ゴールデンウイークにも荷物が届くのは誰のお陰と心得る?

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 ・・・心静かに連休をと思いきや、ざわつかせるようなこのニュース。しかし、目についてしまったものは仕方なし。



参考


 この手のカスハラを仕掛けるカス。少し韻を踏んでみましたが・・・、なくなりませんねぇ。下手をすれば自身が強迫罪や強要罪など、刑法上の罪人になるかも知れないリスク。これを知らないのか、はたまた知った上での行動なのか?
 こういう人々が大好きそうな諭吉さん。もう間もなく引退ですが、彼がどんなことを言ってたか知ってます?
「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」です


 よって、君たちのような輩には諭吉を手にする資格なし・・・です。そもそも宅配のお兄さん(おじさん・お姉さんもいるでしょう)だけじゃなく、長距離ドライバーとか仕分け人とか、暦に関係なく働いてくれるから年がら年中荷物が届くわけで、これを理解していれば、多少の手違いに怒る場面は有ったとしても、軽々に「土下座せよ」なんて言葉が口をついて出るはずがないのです。




とかく人としてどうなの? とかそちらの方面に思いが向いてしまいがちですが、おしなべてこういう人たちは・・・社会科の勉強が足りない。そういうことだと思いますね。
 



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『老子』を読み返してみた・・・3.愚民主義?

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今日は『老子』を一部読み解いてみましょう。




『老子』第3章より


不上賢、使民不争。不貴難得之貨、使民不為盗。不見可欲、使民不乱。


賢を上(たっと)ばざれば、民をして争わざらしむ。得難きの貨を貴ばざれば、民をして盗を為さざらしむ。欲すべきを見(しめ)さざれば、民をして乱れざらしむ。


訳「賢者を重視しなければ、民は功名を競わなくなる。高価な財貨を珍重しなければ、盗みをはたらかなくなる。欲望を刺激しなければ、乱を起こすこともない」




 ・・・・・・ちょっと今回は随分と上から目線に見えなくもないですが、もともと『論語』だとかこう言ったものは、為政者の心得みたいなものをメインに説いているので、ここかしこに上から目線的な文言が見られます。これが嫌い=漢文嫌い、となる人も多いようです。


 苛烈な競争もない。有ったとしてもゆる~い競争。だから無理に飛び出さなくてもいい。普通に暮らせるだけの財があれば十分。みんながそう思っていれば、泥棒もいなくなる。欲望がなければ反乱も起こらない。そういう理屈。
 ここをもって「愚民政策」と捉える人も多いようです。そう見える部分は確かに多いのですが、実はそうではなく「種々の欲望から魂が解放された、ゆるい生活」これなんじゃないかと。
 心穏やかな生活ですね・・・。欲望と、そこから派生する競争心、それがない世界。でも資本主義は、人の欲望と競争心を利用して発展してきました。それに対するアンチテーゼとして共産主義が提唱されましたが、これもイマイチ。欲望と競争心を抑え込むものでは有りませんでした。



こういう世界は、未来永劫訪れないものなのかも知れません。これがまた、一部の人々を魅了するポイントなのかも知れません。




参考文献:守屋 洋著『新釈 老子』
PHP文庫1988年





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すっきりわかる家族法道場 22.この子誰の子? その壱(2022年改正以前)

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 離婚のパートも終了。ここからテーマは「親子」・「親権」・「後見」・「扶養」・「相続」と次第に面白くなってきますが、可能な限りシリーズを長く続けられるよう、丁寧に解説をしていきたいと思います。(日々ネタ切れとの闘い・・・w)



 まずは親子関係。一番の鉄則は、「子を分娩した女性=母」という公式です。これは何があっても揺らぎません。そのあと養子縁組などで「養母」がつくケースもでてきますが、「実方の親(実母)」という事実は一生消えることはありません。


ところが父は誰か?・・・ということになってくると若干話がややこしくなってきます。
「ととさまは誰?」
これが、この子誰の子問題というわけです。簡単に纏めてみました。2022年の法改正以前のお話になります。




 「推定されない嫡出子」の扱いですが、実務上は夫の子として扱うという慣行で処理されて来ました。よってここは余り考える必要はなし。厳密に言えば「推定されない」のであるから、認知が必要という理屈になるのですが、いわゆる内縁状態からの「できちゃった婚」に対して、いちいちややこしい認知をさせるのも現実的ではないな・・・という配慮からのものです。



 やがて離婚し再婚。ここで、どのタイミングで新しい夫との子が出生したかによって、大袈裟ですが明暗が別れることになります。離婚(婚姻解消)から300日を経過していれば、文句なく新たな夫の子と認められるのですが、若干早かった場合はどうなるか?
前婚でかなりの期間にわたって交渉....(夜伽と呼ぶ人も)...が無かったとしても、この300日ルールが障害となって、前夫の子と推定されてしまうのです。


 さて、前婚の解消原因が夫のDVであった場合どうでしょう? 家裁による調停や裁判の場で、見たくもない凶暴夫と顔を合わさなければなりません。下手をすれば乱闘騒ぎの危険性も。これが嫌で出生届を控えるという無戸籍児が一時問題になりましたが、ここで実務上の救済措置が編み出されました。


 2007年5月7日「法務省民事局通達」 これにより、懐胎(妊娠)時期が夫との離婚後であれば、調停・裁判の手続きなしに「懐胎時期に関する証明書」を添付することによって新夫を父とする出生届が出来るようになりました。
 ただし、あくまでも実務上の救済に過ぎず、ある意味宙ぶらりんの状態であったため、いっそのこと明文化すべき! ということで2022年の改正に至ったという流れになります。
次回はその2022年改正の内容について触れてみたいと思います。





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