法的よもやま話・・・今更おさらい家族法改正①「十月十日(とつきとおか)が死語になった?」

|ω・) ソーッ・・・ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。
 




 犬神家のトピックは後日に回しますが、2022年の民法(家族法)の改正について少し触れておきたいなと思います。


 一番の目玉は、女性の再婚と出産に関して、いわゆる300日ルールが見直されたという事です。「十月十日」という言葉を聞いたことはありませんか? いまですら死語になっているのではないかと思われるこの言葉ですが、つまり、夜伽がヒットしてから「十月十日」つまり300日経過後に、子が産まれるという医学的な経験則でもって、「この子誰の子?」の問題を解決しようというルールです。
 民法772条によると、「婚姻成立の日から200日後、または婚姻解消(離婚)もしくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎(つまり前夫の子を懐胎)したものと推定する」とされています。この条文自体は維持されますが、運用に柔軟性を持たせるという意味での改正がされました。詳しくは後日「すっきりわかる家族法道場」で触れたいと思います。


 ということは改正前の場合、例えば夫のDVから逃れてきた妻。この女性が微妙な時期に新しい男性と幸福な関係へと結ばれ、彼との間の子がたまたま離婚成立300日以内に生まれてしまった場合、法律上は前のクズDV夫の子と推定されてしまうのです。
 もっとも、現在はDNA鑑定による親子関係の有無確認が簡単にできますから、この結果によって否定することが可能です。しかし、家裁での裁判や調停の手続きが必要だったりと、かなり面倒でした。
 ただ、改正前の判例。とりわけ最高裁判決では、「鑑定による生物学的な親子関係は置いといて、現にこうして親子として円満な家庭を築いているのだからそれでいいのではないか。あえて、判決を以ってこの円満な親子関係を破壊するのはしのびない」といった価値観に依拠した判決が下ることが多くなっています。学説では、これを「家庭平和説」と呼びます。



 このような判決の積み重ねが、ようやっと法務省をはじめ内閣を、ひいては国会も動かした結果ということもできます。つまり十月十日を過ぎない出産であっても、新夫と円満な家庭を築いているのなら、それでいいじゃないか。ってことですね。
 実際、前夫の嫡出推定が及ぶと困るから、と言ってわざと出生届をしないケースも多々あり、いわゆる「戸籍のない子」が沢山いたそうです。産婦人科医もグルになって、わざと出生日を遅らせることもあったようです。ですから、このような問題についていえば、画期的な改正と評価できるでしょう。それから、これに伴う形で、いわゆる100日ルール(前婚解消後、100日間再婚を禁ずる・・・民法733条)も撤廃されました。


 ほかには、子供の養育に関する親の懲戒権廃止、といった項目もあるのですが、それについては次回に触れたいと思います。それではまた。



ほなまた! 失礼!
|彡. サッ!!