相続?なにそれ、おいしいの? 36.犬神家の相続廃除・・・その六(廃除された者の代襲相続者)

|ω・) ソーッ・・・ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。




 第34・35回と続きました「実子の相続廃除」ですが、あまりの生々しさと、親族間の怨念の深さに「ドン引き」された読者様も随分多かったのではと思います。ある意味、犬神家を超えてくるようなおどろおどろしさでしたね。






 前回35.の終わりに、「抜け道」のような含みを残しました。ここで犬神家の系図を引いて・・・と思ったのですが、こっちのほうが延長で考えやすい上に、いろいろと解説の幅が広がりそうなので、判例③をアレンジして、↓こんなものを用意してみました。
知ってる人は知っている。ピンときたはず。



「なんだ結局あれだろ?」
「はい。結局あれです」



 相続廃除のあとしばらくして父親Xが死亡。さらに不良娘Aと反社の男Bの婚姻が「できちゃった婚」であったケースの話です。結婚当時には二人の愛の結晶。胎児CがすでにAのお腹にいた場合です。判例を見る限り、婚姻成立後、さらに結婚式の招待状をバラまく時間的余裕が有ったとみえますので、胎児Cは廃除決定前に滑り込み。ギリギリセーフのタイミングで間に合ったと言えます。



この場合の胎児の扱いですが・・・
民法886条1項:胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
民法886条2項:前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

さらに・・・ 
887条2項:被相続人の子が(この場合は不良娘A)が、相続開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定(相続欠格)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。



 被相続人(X)の直系卑属ですから、例えばBに連れ子が居た場合などは、Aと養子縁組をしていなければ、その子は直系卑属には当たらないということで良いと思われます。でも、このケースはあくまでも「できちゃった婚」です。これはセーフと見るべきです。


 そして、Cが無事に生まれてきた場合、両親A・BはCの親権者。そして成人までは法定代理人の地位を得ることになります。つまり、親権者には未成年の子の財産管理を行う権利も注意義務も生じます。


しかし・・・
827条:親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。



 つまり、善管注意義務よりもその義務は軽いということです。善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)は自分の財産並みの注意では足りず、もっとしっかりと相手方の利益に注意を払って管理しなければならないという義務で、やはり責任は重いです。
 では、善管注意義務はないから・・・。これをいいことにA・BがCの相続財産をジャブジャブと使う・・・・・・。これはできません。いわゆる「利益相反行為」にあたりますから制限があります。



826条1項:親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。


 注意しなければいけないのは、例えばAがCの教育資金調達のため、A名義で借金し、代襲相続でCが取得した不動産を担保に入れる(抵当権を設定する)ような行為。このような行為も、外形説という立場からは利益相反行為になってしまいます。


 廃除されたと思いきや、その分が赤ちゃんCに転がり込んできて、両親A・Bとも全面的に(゚д゚)ウマー そうは問屋が卸さないという仕組みですね。ちゃんとCちゃんのために取っておきましょうということです。


 娘は憎いけれども、そうは言うてもやっぱり孫は可愛い。そうXが思ってくれたなら、廃除された分は孫Cに移転してもそれはそれでいいと思うでしょうし、逆の感情であれば、「遺言」によってCに与えるのは「遺留分」のみという旨の意思表示をして、妻X’の取り分を多めに設定するという方法もあります。
 


 ここでお爺ちゃんXがいきり立って「孫も相続廃除してやる」と息巻いても、たぶんCの廃除請求は認められないはずです。生まれたばかりの無邪気な赤ちゃんが、Xに虐待・侮辱・非行をはたらく事なんて不可能ですからね。どうでしょう? ちょっとは明るい陽が差してきた気はしませんか?






ほなまた! 失礼!
|彡. サッ!!