法的よもやま話・・・今更おさらい家族法改正②親の懲戒権。体罰禁止!

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 本日も犬神家のネタは置いといて、家族法にまつわる小ネタでいきたいと思います。まず親権、つまり親ですね。親が無ければ祖父母やそれに準ずる立場の人たち。つまり子を養育する立場の人の力として、民法820条以下にこのような条文で認められています。


民法820条:親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
  822条:親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。



「親にもぶたれたことがないのに・・・」という有名な台詞がありましたが、2022年の家族法改正で、これが現実のものになりました。第822条の条文は削除され、820条から821条へと次のような建て付けになりました。


  820条:親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
  821条:親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならなず、かつ、体罰その他子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。
(いい具合に老眼が入っていますので、六法を見ながらの手打ち作業は苦行に似たものがあります・・・笑)


 旧822条を隠れ蓑にして、公然と体罰を子に課すという虐待と紙一重の懲戒。または、冷水をぶっかけて寒空にさらすなど、虐待そのものにしか見えない懲戒がまかり通っている状況を憂慮した上での改正と考えられます。
 822条が児童虐待の温床になっていますので、この際削除してしまえということです。趣旨はまあ理解できます。子供に手をあげること自体を禁じてしまえば、確かに身体的な虐待は減るでしょう。


 しかし一方で、精神的な圧迫を加える形での虐待が増えるのではないか、とも思います。精神的な圧迫は、直接的な肉体的虐待と違って立証しにくい。という点もあると思います。
 言って聞かせて、それでも解らない。いや解ろうとしない。そんな場合でも、手を上げて顔や腹を殴る蹴るのはいけない。という考えで子供のしつけをやりましょうという趣旨は理解しようとは思うのですが・・・。まず顔や腹はいけませんね。これは危ない。当然です。


 しかし、正直なところ、手で一発二発「お尻ペンペン」、こんな事にまで目くじらをたてて「違法だ!」というのはいかがなものかと。 ああ、こんなこと言ってる時点で私も昭和の人ですね。それじゃあいけない時代なんです。それでは、本日はこの辺で。



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著作権こぼれ話・・・5.アレが商標登録だって?(著作権と似て非なるもの)

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プロ野球もベストナインが決まってストーブリーグへと突入です。過去の話を蒸し返すようですが、実はあの岡田監督の口癖が、なんと知的財産として認定されていたという、驚きの事実です。



過去のサンスポの記事です・・・
www.sanspo.com


 商標権ってなに? という話の前に、同じ知的財産権の代表格である著作権とどう違うのかを考えてみたいと思います。まず、著作物の定義ですが、


著作権法2条1項:この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一号:著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二号:著作者 著作物を創作する者をいう。


 単なる個人の口癖で創作性もないし、そもそも、関西の人間であれば「そらそうよ」なんて普遍的な常套句です。よって「そらそうよ」は著作物にあたりません。ただし、志村けんの「アィーン」のような、独創性の高い物については、一発ギャグであっても争いの余地が有って微妙とする説もあるようです。
 さらに、著作物が創作された時点で著作権が自然的に発生するとされています(著作権法51条1項) 例えば、小説なら最後の一文字を書き終えた瞬間ですね。それに対し、商標権は特許庁の登録が完了しなければ権利が発生しません。商標権が発生すると、独占的に利用することが可能になり、類似品などを排除することも出来るようになります。
 登録された商標が一般名詞化してしまった例もありますね。例えば「宅急便」とか、いまは「宅配便」と呼び代えることも多くなりましたが・・・。


 しかし、ただの口癖で商標登録が認められたのは驚きです。阪神球団もダメ元のつもりで出願したのかも知れません。去年の11月に出願して、かれこれ7か月もかかっていますから、随分と審査が長びいた気もします。
 商標登録が認められたことによって、「そらそうよ」の文字が躍ったタオルなどが、中継に映り込むようにもなりましたね。
 もちろん、他の業者が勝手に「そらそうよタオル」を作って販売することはできません。昔の阪神球団と言えば殿様商売というか、どんなに弱くても客が入るし、成績低迷を理由に選手の年棒も絞れるし・・・結局儲かる。そんな印象でしたが、監督の口癖を商品化してしまうあたり、随分と変わったなと思います。阪急と合体して、阪急阪神東宝グループになったのを転機に、商魂逞しくなった気がします。




商標登録について、詳しく解説された政府広報のHPがありますので、紹介しておきます。
www.gov-online.go.jp


 ちなみにこのHP、J-PlatPatの「商標検索」という機能があります。そこから「そらそうよ」で検索してみて下さい。「株式会社阪神タイガース」のほか、もう一社全く関係のなさそうな大阪府内の会社が登録を出願しているようです。多分、先勝ちで「株式会社阪神タイガース」が登録されて、もう一社の方は認められない。そんな可能性も考えられますね。


 でも、これって阪神球団が権利を持ってるので、当の岡田監督本人には一銭も入ってこないはずなんですよね・・・。ひょっとしたら、利益の数パーセントを年棒に上乗せする。みたいなオプション契約があるのかも知れませんが(笑)
 来年のインタビューでも景気のいい「そらそうよ」連発を期待したいところではあります。



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相続?なにそれ、おいしいの? 16.遺言書が二通出てきたら・・・?


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 メインブログを「ムラゴン」に移してから、かれこれ一ヶ月が経とうとしています。徐々に読者さんも増えて来て嬉しいところです。今後ともよろしくお願いいたします。Niceやブログ村行きのバナークリックししてくださるかた本当にありがとうございます。




 さて、犬神佐兵衛の遺言書・・・数回に分けて紹介しましたが、ほんとうにとんでもない遺言でしたね。その後小説の流れで行けば、この遺言をきっかけに、凄惨な連続殺人の発生へとつながっていくわけですが、これはあくまで小説『犬神家の一族』での話。
 まがまがしい佐兵衛の遺言、その内容については、以下の過去記事で再度確認してみられることをおすすめします。






 現実世界でたまにあるのが、一回目に書いた遺言書の内容について、あとから冷静に考えた結果、これは良くないと思って、二通目の遺言書をしたためたというケースです。
 たとえば顧問弁護士・古舘に指南されながら、一通目の遺言をしたためて預けた。この段階で、聡明な佐兵衛はどんな要領で遺言書を書けば良いのか、コツをつかみ、一通目の遺言書は、内容的にあまりにも酷なものかも知れない・・・、などと思い返して二通目をしたためた。そして、いつか古舘弁護士の顔を見た際に、一通目のものと差し替えてもらおうと思って、自室に保管していたのですが、それを失念したまま月日が過ぎてしまった。
 認知症患者でなくても、多少もの忘れがひどくなったな・・・というレベルの御老人なら、あり得ない話でもありません。


 この場合の扱いですが、二通目をしたためた時に意思能力を失っていたなど、
↓ 前回の記事

このような場合は別ですが、後の日付で書かれた遺言書が優先されます。これを遺言の撤回と呼びます。撤回=取消と思われる方も多いのではないかと思いますが、撤回は、一度有効に成立した法律行為を、将来に向けて効力を消す行為です。これに対して、取消は初めからなかった事にしてしまう点で微妙に違います。これも法律用語の無駄知識・・・。



民法1022条:遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
1023条1項:前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2項:前項(1項)の規定は遺言が遺言後の(財産の)生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。


 つまり、一度は珠世に全財産をと思ったけど、やっぱり半額に直しておこうという場合などですね。「全財産あげます」と「やっぱり半額にします」は明らかに抵触しますから、前の遺言、つまり「全財産」は撤回しますということになります。
 簡単に言うとこんな事なんですが、簡単な事をわざと難しく書く・・・これが条文の文章作法になっています。条文に早い話、後勝ちですよと書いてくれれば解りやすいのではないかと思いますが、あまり単純明快に書きすぎてしまうと、幅広く条文を解釈できなくなってしまう弊害も出てくるかも知れない。そういう感じで、言葉は悪いですが、”いろんなルート”を設けるために、あえて難解な文体を使用している”。というところもあるのかもしれません。




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相続小ネタ集5. もしもこんな自筆証書遺言があったら?


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本日は遺言関係の小ネタ的なものになります。そんなわけで、もしものコーナー。
ドリフじゃございません(゚∀゚)ダメダコリャ



 三つほど見てみましょうか・・・。ちょっとクイズ感覚に楽しみながらどうぞ。こんな遺言書あり? なし?


① 「書き間違いが絶対多いから・・・」鉛筆や消せるインクで書いてある遺言書。
答え あり
 ただし、第三者に発見されたあと改竄される危険性が高いので、当然おすすめはできません。そもそも「そんな人いないよ?」の世界です。法務局に預けに行っても、当然いい顔はされないはずですが、ここをゴリ押しして預かってもらえれば、改竄のリスクは下げることができます。(良い子は真似しないでね)
 最初から書き直し覚悟で臨む。訂正がある場合はもとの文字を隠さない形で二重線を引いて訂正印。縦書きなら右の余白に正しい文言。横書きなら上の余白です。さらに面倒ですが、近くの余白部分に、例えば「4文字削除、3文字加筆」などと書く必要があります。だったら最初から書き直す方が良いかも?



② 「控えが欲しいから・・・」カーボン紙を挟んで複写ね。(なんと!本年の行政書士試験に出題されました!Σ(・ω・ノ)ノ!ビックリ!!)
答え あり
 カーボン複写のものについては、実は判例で有効とされています。(最高裁判決・平成5年10月19日) なんで有効なのかな? 次の例③の伏線になるかも?





③ 「鉛筆で手書きしたのをコピー・・・」ペンで書いたっぽく見えない?
答え なし
 コピーの方を正本としてしまった場合、遺言書の真贋を判定する際、筆跡鑑定で困ることになります。②のカーボン紙はなぜOKかと言えば、「カーボンを通してでも筆圧は判る」ということになるかと思われます。上っ面だけを写したコピーだと、筆圧の掛け方や力加減のクセがわからず、字の外形だけでの判断になってしまうため、正確な鑑定が出来ないということです。なるほど・・・・・・だから感心はできないものの、鉛筆書きでもコピーでなければとりあえずOKということになるわけです。



 以上「こんな遺言書ねーだろ?」の世界からこんにちは。仏様みたいな親族でも、相続になると人が変わるのはよくあるケース。うちの親族は犬神家みたいな人ばかりだ・・・という事態も想定して、きちんとした形で遺言書を作成しましょう。
 こうやって考えると自筆証書遺言って面倒なんです。多少費用がかかっても公正証書遺言にする人が多いのも頷ける話です。



公正証書遺言ってなに? 忘れてしまった方はこちらから復習してください。
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