相続小ネタ集 43.相続廃除ダメでした(ある判例)


|ω・) ソーッ・・・ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。




 さて、40~42回にかけて勘当から遺言で相続分ゼロ宣言、さらに踏み込んで相続廃除まで解説してきましたが・・・相続廃除の要件は、法的にはこんな感じになっているところでしたね。(第42回のおさらい)


(条文)民法892条
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を与えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。




第40~42回の内容はこちら



 本日は、実際の892条の運用について、実際のところどのような基準でなされているのか? ひとつの判例を紹介したいと思います。これは遺留分剝奪(相続廃除とほぼ同義)が認められなかった例です。


(判例要約)東京地裁 平成25年2月28日判決
 ある女性が死亡した。生前女性に暴力をふるったばかりか、不貞行為が原因で12年間別居状態だった夫のXが遺留分減殺請求権を行使してきた(遺留分を寄越せと言ったきた)が、女性の子のYらはこれを認めないと主張。
 裁判所は、女性とXの夫婦関係の破綻を認めたが、暴力と別居の前に、約30年間の平和な共同生活があったことを評価し、Xの権利濫用を認めなかった。


青竹美佳著『遺留分制度の機能と基礎原理』法律文化社2021年より



 ・・・どうでしょう? 子供らの立場から見ると随分と甘々な判決に見えますね。そうは言っても、言葉は悪いのですが裁判所としては「一方的な感情に流される」のは良くない事です。悪そうに見える方にも、いわば「汲むべき事情」が有るか無いか、こちらの要素も裁判所としては考えなくてはなりません。今回の例では「そうは言うても、その前は30年も仲良く夫婦やってたんでしょ? 廃除はちょっと可哀想じゃね?」ってことになりますね。



 このように、どっから切ってもどう見てもコイツは極悪人ということにならなければ、なかなか相続廃除(遺留分剥奪)は成立しないという難しさがあるのです。





・・・裁く方も大変です。次回は、逆に廃除(遺留分剝奪)に成功した判例を見てみましょうか😎



ほなまた! 失礼!
|彡. サッ!!