相続?なにそれ、おいしいの?・・・44.犬神家の事業継承と遺留分
|ω・) ソーッ・・・ 皆さん、ご機嫌よろしゅうに。
今回は、遺留分。何度も出てきた言葉ですね。推定相続人が有する、遺産相続の最低保障額を受け取る権利と、会社経営のお話です。もし、このなかに「街の社長さん」がいらっしゃれば、参考になればうれしいです。
例によって、犬神家の例を挙げながら解説したいと思います。いつものごちゃごちゃした系図ではなく、特別に資料を用意しました。実はこの「遺留分」。会社経営を引き継いだ人にとっては、なかなかの曲者です。これが過去の「遺留分減殺請求権」というやつです。
図を見て見ていただくと解りやすいと思います。図のとおり、アンチ珠世勢力が会社財産(事業財産)に半分の「持分権」を有するという構図になります。
( ^ω^)・・・「持分権」と言われてもピンと来ない、かも。
例えばワンフロア10戸×5階建てのマンションがあったとして、その一室を貴方が買いました。すると、マンション全体に対して、1/50の「区分所有権」という、「持分権」に似た権利を貴方が有することになります。
そして、マンション管理において、「建て替え」など重大な変更事項については、区分所有者数及び議決権の4/5の賛成で可決できます。つまり口をだす権利が付随しているわけですね。
これを犬神家の事業経営に当て嵌めてみてください。遺留分減殺請求権によって、1/2の議決権と経営財産をアンチ珠世勢力に握られるわけですから、珠世にとって、こんなにやりにくいことはありません。かつて、2018年まではそうでした。しかし・・・
2018年の法改正で、上の図のように変わりました。遺留分権利を三姉妹に行使された以上、珠世の肩に、1800億円相当の遺留分支払い義務がのしかかる事実は変わりませんが、ちょっと内容が違ってきます。名前も「遺留分侵害額請求権」に変わっています。
「1800億円の支払い債務はあるものの、事業財産にかかる持分権(物権的効力)はなくなり、各自600億円ずつの”金銭債務”に化けてしまう」ということです。
こうなってくると、珠世は3000億円の事業財産を思うがままに活用し、頑張って稼ぐことが可能となります。”金銭債務”・・・ひらたく借金の一種と理解してください。
そうして、商売が軌道に乗ったところで一挙に600×3=1800億円を支払ってしまえば、あと腐れなく解決にまでもっていくことができます。
もちろん、それまでのつなぎとして、支払期日の猶予を申し入れたり、のんびりと年100億円ずつ分割払いの申し入れも可能です。もっとも、この場合、少なくとも法定利率3%(民法:404条2項)がかかってきます。(約定によってそれより低い利率設定も可)なお、法定利率ですが、令和8年4月1日以降、変更される可能性があります。(昨今の金融事情を見るに、据え置きか、やや下落になる・・・?)
参考
なお、参考までに。中小企業を対象に事業承継と遺留分の調整を図るため、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」というものが、2008年に成立しましたが、2018年度(データが古くてすみません)の実績では、この制度を利用するため、新規に家裁に申し立てられた件数はわずか18件だそうです。
制度の定着としてはまだまだのようですね。
ほなまた! 失礼!
|彡. サッ!!